【お願い】俺たちの主を助けたい【力を貸して】


1:川の下の子
お願い誰か、主を助けて
俺たちが悪いんだ
俺たちのせいで主が可笑しくなった
お願い、俺たちに力を貸して

2:迷子の審神者さん
2ゲット・・・ってそのコテハン、もしかして加州か?

3:迷子の審神者さん
とりあえず落ち着け加州
何がどうなったのか、落ち着いて書いてくれ
ゆっくりでいいぞ。お前がパニック起こしたら助けられるものも助けられなくなる

4:迷子の審神者さん
3がイケメン・・・
とかやってる場合じゃないな、とりあえず詳しく話してくれ
まず川の下の子と主のスペック、それから経緯、後どうしたいのか
最低でもこれくらいだな

5:川の下の子
わかった、少し待ってて

6:迷子の審神者
ゆっくりでいいからな、待ってるから

7:迷子の審神者
慣れてないだろうしゆっくり待ってやろうぜ

8:迷子の審神者
オッケー

9:迷子の審神者
それにしても助けてって・・・もしかしてブラック本丸か?

10:迷子の審神者
だったら刀剣側がスレ立てするか?
ブラックに送り込まれた審神者ならともかく

11:迷子の審神者
分からんぞ。前にブラック引継ぎ審神者に暴行加えてたっていう刀剣がスレ立てしてたこともあったしな

12:川の下の子
書き終わったから張っていく

川の下の子
俺。主の初期刀。
余所の審神者が言うには俺は一般的な加州清光よりも愛を求めてないって言われたことがある


俺の主。女の子。確か20歳くらいだったと思う。審神者歴5年目
元々審神者になりたかったわけじゃないんだけど、家の都合で審神者になったって聞いたことがある
後その都合のせいで審神者を辞めることも出来ないって

本丸の刀剣
短刀
厚、平野、博多以外居る

脇差
鯰尾、青江、堀川

打刀
俺、歌仙、安定、同田貫、和泉守、長谷部

太刀
獅子王、燭台切


御手杵

大太刀と薙刀は居ない

13:川の下の子
主が審神者になったのは5年前
理由はぼかされたけど家の都合で審神者になったらしくて、なりたくてなったわけではなかったみたい
それでも俺たちの命を預かる仕事だから、って主は毎日慣れない環境のなか頑張ってた
でも主には致命的な弱点があった。それが血
俺たち刀剣男士にとっては血は見慣れたものだし、敵を殺せば血も出る、敵に切られれば血が出る
良くも悪くも身近なもの過ぎたんだ
けど主は違う。最初の戦闘で中傷になった俺を見て真っ青な顔になって、泣きながら手入れをしてくれた
うちにいる刀剣の数が少ないって思った人もいると思う
主はほとんど鍛刀をしてないんだ。鍛刀するよりも手入れ用に取っておこう、刀装作る為に置いておこう
中傷姿の俺を見て主は絶対に俺たちに怪我をさせないって決めたみたい
それでも政府のノルマがあるから偶には鍛刀してたけど

今思えばここで主に何か言ったら変わったのかもしれない

14:川の下の子
主はネットや口コミで刀装のレシピを調べては特上の刀装を作れるように研究しはじめた
このころはまだ俺と短刀達がメインだった
主の口癖は「刀装なんて壊してもいいから怪我しないで帰ってきてね」「中傷を負ったら直ぐに戻ってくるんだよ」
俺たちに言うというよりも、自分に言い聞かせているような感じが強かった
そのおかげか俺たちは全員怪我らしい怪我もせずに出陣できるようになったし、いわゆるドロップ刀で本丸にも刀剣が増えてきた
このころはよかったんだ。主も笑ってくれてたし、俺たちも楽しかった。
本音を言えばもっと戦いたいっていうのはあったけどそれよりも主が嬉しそうなのが俺たちも嬉しかった
余所の審神者が言ってた一般的な加州清光と違うっていうのはこの辺りのことらしい

それが変わったのは同田貫がやってきてからだった
みんなも知ってると思うけど、アイツは戦場に意味を見出す刀剣。主の進軍方法が気に食わなかったがそれでも主だからと言わないようにしていた
けど御手杵がやってきてから加速した
刀装が壊れたくらいでなんだ、中傷なんて怪我じゃない。
主はごめんね、ごめんねって言いながら俺たちを戦場に送り出した。アイツらが気にするからと怪我を負っても思う存分戦わせた
毎回中傷で、血まみれで帰ってくる俺たちを見て主が何を思ってたのかは分からない

正直、口には出さないでも軽傷でも帰るような戦いには皆心のどこかで飽き飽きしてた
もしかしたら主はそれすら察してたのかなぁ?

15:川の下の子
中傷で帰ってくる度真っ青になっていた主はいつからか血塗れになった俺たちを見ても顔色を変えなくなった
その頃から独り言が増えて、何もない空中を見つめることが多くなったんだ
相変わらず刀装を作り続けるし、鍛刀もあんまりしない
だからちょっと疲れてるんだろう、くらいにしか思わなかった
だっていつもと何も変わらなかったんだ
何も変わらず俺を愛してくれた、何も変わらずに短刀たちと遊んでた
だから主が壊れ始めてたなんて知らなかったんだ
その日は資材がちょっと心許ない日だった。だから御手杵が軽傷を負った時に帰還命令を出したんだ。
槍って軽傷でも資材が他の刀より使うからね
その時皆で言っちゃったんだ
戦の事も知らないくせに、まだ戦えたのに、何で帰還命令を出したんだ
主はいつもみたいにごめんね、って謝って御手杵の手入れをしに行った
後で聞いたけどこの時にはほとんどの資材が底を尽きかけてたらしい
ある日万屋に行っていた主がニコニコしながら帰ってきた。お土産だよって山みたいになったお守り極と仙人団子を持って

「みんな、いつも思う存分戦わせてあげられなくてごめんね。これでもう何も心配ないよ。疲れてもお団子があるし、戦場で重傷になってもお守りがあれば怖くないよね。ごめんね、戦の事何も知らない主だけどこれがあればもうみんなが戦い足りなくなることもないよね。資材もたくさん買ってきたよ。もう資材不足なんて怖くないからね。もう大丈夫、大丈夫だからね、あははははははははははははははははははははははは」

いつもの笑顔だった。でも目が笑ってなかった
顔は笑ってるのに、目だけが暗闇みたいだった

16:川の下の子
誰も何も言えなかった
あんなに優しかった主が変わっちゃった事実にみんな衝撃を受けてたから
そのまま第一部隊を戦場に送り出した主は部屋に入ったまま出てこなくなった
燭台切に自分の分の食事は用意しなくていいって言ってそのまま

ねえ、どうしたらいいの?
俺たちが主を傷つけたのは分かってるんだ
主が血が苦手なのを知ってて無茶な戦い方をした。その戦いに興奮を覚えたのも事実だけど、それ以上に主の心に傷をつけた
今も主は用事がなければ部屋から出てこない
部屋からは独り言と時々笑い声が聞こえてくる
燭台切が食事を持って行ってもちゃんと食べてるからって食べてくれない

17:迷子の審神者
おう・・・これは・・・

18:迷子の審神者
完全に正気が振り切れてるな・・・

19:迷子の審神者
加州、まずこんのすけを呼ぶんだ
それから現世にある医療機関の受診。これしかない
お前の主はお前たちが思ってる以上に心を病んでしまっているし、壊れている
下手なことをすれば主は二度と戻ってこられなくなるぞ

20:迷子の審神者
専門家に任せた方がいい、これはダメだ

21:川の下の子
出来るならやってるよ
こんのすけに頼んでも政府が了承を出さないんだって
刀剣が少ないのに討伐数が高いって
刀剣確保を主に考えている派閥からはダメだしされてるけど、それ以上に戦績が良いから
お守りを常に持たせて手入れも丁寧にして、その審神者のどこが可笑しいんだって言われるんだって

22:迷子の審神者
あああああ、そういう方向かああああ
確かにこの人可笑しいんですって言われても外側から見たら可笑しいところなんて一切ないもんな

23:迷子の審神者
誰か医療従事者か、そんな知り合いいないか?
審神者友達にちょっと連絡取ってみる
必ず、とは言えないけど加州、待っててくれ

24:迷子の審神者
後は同性同士で話した方がいいかな?
私でよければ主ちゃんとお話しするけど・・・

【頑張れ主ちゃんと書かれた紙を持った茶髪の女性の写真。紙にはIDも書かれている】

25:迷子の審神者
俺も知り合いに連絡取ってみる

26:川の下の子
有難う。俺たちが主を苦しめたのは分かってるけど、俺、主にはまた昔みたいに笑ってほしいんだ
人数が今より少なかったころ、今よりずっと大変だったけど主は笑顔で俺たちに接してくれてた
霊力も他の審神者に比べたら少ないのかもしれないけど、清流みたいに澄んでる主が大好きなんだ

後>>24の審神者さん、よかったら主と話してくれないかな?
ちょっとこんのすけに変わる

27:迷子の審神者
俺の友達に医者居たああああああああああ
けど連絡つかねええええええ
大丈夫落ち着け俺

28:川の下のこんのすけ
こんのすけでございます
審神者様を助けるために沢山の方が助力してくださるとのこと感謝しております
>>24様、大変申し訳ないのですが太郎太刀様や石切丸様といった御神刀の方はおりますでしょうか?
お手数ですがそちらの方を部隊に入れてこちらと演練をしていただければと思います
演練後の方が審神者様に負担にならずに話すことが出来るかと思いますので

********@*****

一度こちらにご連絡をお願いいたします
演練の日程が決まりましたらまたこちらからご連絡させていただきます

29:24
オッケー、今から証拠写真と一緒にメールするね
同年代の女の子が苦しんでるのを見てるだけなんてできない(;_;)


(以下主を心配するコメントで流れていく)


51:名無しの審神者
うちのパッパが、ここの主ちゃんは血で汚れているって・・・
どういうこと・・・

52:名無しの審神者
え・・・詳しく聞いてくれよ・・・

【娘から見た審神者業の話】


ぼうっと空中を見つめる。いつの間にか心は乖離してしまい、何を見ても何も思わなくなってしまった。
審神者になりたかったわけではない。
ただ、あの家に居たら殺されてしまう。逃げ出したくて仕方なかった。
両親と姉と娘。何の問題もない家族だった。
それが変わったのは父親が浮気をし始めた頃からで、母親はそんな父親に対して思いつめ、心を病んでしまった。
温かかったはずの家の空気はいつしかピリピリと張りつめたものになり、父親はその空気に更に浮気を繰り返す。
そんな現状に怒りを露わにしたのは姉だった。
父親が帰ってきたのを見計らい彼に詰め寄ったのだ。
けれど父親はのらりくらりと躱すばかり。そんな時だった。
父親が悲鳴を上げる。
流れ出る赤い色の液体。
「お母さん・・・やめて、そんなことやめてよ!」
包丁を持った母親が昏い瞳で父親を見下ろしている。
「アンタも・・・その男の味方なの・・・?」
「違うよ。私はお母さんの味方!だからこんなことしないで!」
母親を止めようとした姉の胸に包丁が突き刺さる。あっという間に血で染まる胸元。
彼女は甲高い悲鳴を上げる。
「ねえ、**?貴女はお母さんの味方よね?」
彼女はガタガタと震えながら何度も頷く。涙がぼろぼろと零れて顔がくしゃくしゃになる。
それを見て母親は満足したのか姉の血で真っ赤になった包丁を持ったまま幽鬼のように父親にゆっくりと近づく。
その口からは絶えず旦那への呪詛が流れ続けている。

「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

狂ったような笑い声と、母が包丁を首元に当てたのが見えた。
止めようと手を伸ばした娘に、母親の血がかかる。
「あ・・・」
崩れ落ちる母親を呆然と見つめる。
娘はその日から血が嫌いになった。
父はしばらくして浮気相手と再婚をした。あの惨劇の後でよくもまあのこのこと再婚などできたものだ。
近所でも噂にはなっていたが娘にはみな同情的だった。
母親と姉の惨劇よりも、再婚相手の辛辣さが目に余ったからだ。
極力家に居る時間を少なくするためにそこらをぶらついてから帰る日々。
鬱屈としていた。浮気相手のあの目は自分を害そうとするものだ。
そんな時だった。娘に審神者としての適性があるのが分かったのが。
父が何かを言う前に、娘はその話に飛びついた。
この家に居たくはない、こんなところ早く出て行ってしまいたい。
ただただ、その一心で娘は審神者になった。

けれど、審神者業もとても辛い物だった。
初期刀の清光が血まみれで帰ってきたとき、刺された姉と自殺した母を思い出して目の前が真っ暗になった。
ごめんね、私の采配のせいでごめんね。
ただひたすら、娘は謝り続けた。
怪我をさせないように、怪我は最小限に。
娘の心は固まった。
鍛刀はせずとも刀は集まる。それならば刀装作りやもしもの時の手入れの為に資材を集めることにした。

戦の事が分からないくせに。

今まで目をそむけていた事実をはっきりと言われ、娘は頭を殴られたような感覚を覚えた。
そこから少しずつ娘の中で歯車がズレていく。
娘はすぐに政府に連絡を入れ、自分と父親の縁を公的に切って欲しいと頼み込んだ。
少ない刀剣数ながら上位に食い込むような戦績を叩きだす娘の頼みを断ってへそを曲げられたら困ると政府はすぐにそれを了承し、娘の父親は父親ではなくなった。
おかげで父親へ渡していた給料が浮いた。その浮いた金で大量のお守りと仙人団子と資材を購入する。
いつからか血塗れで帰ってきた彼らを見ても何も思わなくなった。
ただ、直ぐに手入れをしなければとだけ。
体が食べ物を受け付けなくなった。仕方ないので栄養ゼリーで食事は済ませるようになった。
真夜中の海の中にいるように周囲が暗い。
娘は自室の中一人ぼうっとする。
「主君、出陣していた第一部隊が帰還しました」
襖の向こうから聞こえてくる前田藤四郎の言葉に、娘は怪我人は?と尋ねる。
「いいえ、この度の出陣は刀装の損傷も怪我を負った者もおりません」
その言葉にほっと溜息をつく。すっと襖をあける。
「お疲れ様です、前田」
娘は前田を見るが、その視線が前田に向くことはない。
どうか戻ってきてください。
前田が言う。
ずっとここに居るよ?
娘が返す。

娘の心を殺したのは他でもない自分たちだ。
前田は泣きたいのを必死に抑え、その場を後にした。

【女から見た娘の話】


娘を見た瞬間臭ってきた腐臭に女は顔を青くした。
見た目は美しいわけではないが愛嬌のある可愛らしい娘だ。しかし、この臭いは何なのか。
自分の背後に立っていた石切丸が「血で呪われている」とポツリ呟く。
向こうに居る清光がすがるように女を見る。
結果は向こうの勝利。正気を失っていても刀剣達の育成やコンディションの調整はきちんと行っているようだ。
「こんにちは、貴女の部隊、とても強かったわ。少し話をしてもいいかしら?」
「は、初めまして!ありがとうございます。私なんかでよかったら是非!」
そう言って花のように微笑む娘。
一体何があればこうなるのだろうか。正気を失っているようには見えない娘を失礼にならない程度に見つめる。
会話をしても、娘は普通だった。
しかし会話をしている内にポツポツと違和感が出てくる。
「え・・・と、そんなに出陣しているの?」
出陣回数が異常に多い。
軽傷に満たない傷でも手入れするというのだから手入れの回数は多いだろう。それ以上に出陣回数が異常だ。
「私は戦の事何も分からないから、せめてみんなが思いっきり戦えるようにしたんです」
照れたように笑う娘に、女は寒気を覚えた。
足元から這い上がってくるような、奇妙な寒さ。引きつりそうになる口元を必死に抑える。

こんなのもう、ブラック本丸だ!

叫びたくなるのを必死にこらえる。
壊れている。
この娘は、もうどうしようもないくらいに壊れてしまっている。
視界の端で石切丸が首を横に振ったのが見えた。
「ふふ、私も早く大太刀さんをお迎えしたいです。石切丸さんってとっても強いんですね」
「それは光栄だな。君の所に早く私が来ることを祈っているよ」

向こう側で清光が唇を噛んでいる。
「ねえ、よかったら貴女の刀剣男士達とお話しさせてくれない?」
「はい!大丈夫ですよ」
娘の許可を取り、清光の方へ向かう。
「ね、ねえ・・・主は・・・」
「加州清光、あの子から感じるあの腐臭は何?壊れているなんてものじゃないわ・・・これ以上は本職に任せるか、無理ならばこれ以上悪化しないように刺激しない方がいい」
「腐臭・・・?」
一体何のことだと清光は眉をひそめる。
「無理なの!?主は・・・主は・・・」
「せめて連絡先の交換が出来ないか打診してみる。貴方たちに話せない事でも人間同士なら話せるかもしれない。カウンセラーじゃないから専門的なことは無理でも、彼女が抱えてるものを少しでも軽くすることは出来ると思う。焦ったら本当に立ち直れなくなるわよ、あの子」
女の言葉に清光は迷っていたが頷く。
ゆっくりと少しずつ戻していくしかない。
連絡先を交換し、女は自分の刀の元へ戻る。
「ねえ、あの子」
石切丸は硬い顔をしている。

「血で呪い、血に呪われているよ」

ふと女が振り返ると娘の足を掴んだ血まみれの何かがそこには居た。