多分変わってない関係性


姉さん、事件です。

という冗談はさておいて、私には前世の記憶があります。
私の前世は時の政府の職員で特殊能力を駆使して(笑)刀の神様が戦いやすい環境を整える事でした。
まあそれはそれで前世の話である。
・・・と言いたいところだったのだが今世の私も特殊能力(笑)が使えていたのですよ・・・笑えよ。
相変わらず自分に伸びる縁と感情は見えないままだが強くてニューゲームのおかげかある程度抑えることも出来たので普段は見なくて済んだのは本当に良かった。
ある程度の知恵と知識はあるし、今世の両親に迷惑をかけた近所のクソババアから二人に伸びていた悪縁を切ったりと割とフリーダムに生きていた。

「やあ、久しぶりだね・・・・・・主?」

「・・・あ?」

高校二年生の春、前世の押し掛け同居人と再会するまでは。




「今時の女の子ってさ、本当に占いが好きだよね」
タロットカードを切りながら隣に座る青江 高次に声をかける。
あの衝撃の再会から1年。何だかんだと青江とは気のいい友人として付き合っている気がする。
「その言い方だと自分が「今時の女の子」じゃないみたいだよ」
「二度目の人生だと楽しみ方が分からん」
「君が切ってるそのカード、タロットじゃないか」
「これが一番擬態しやすい」
ああ、なるほどと青江は前世の名のようににっかりと笑う。
縁が、感情が見えると言うのは時に厄介だ。
今時のミーハーな女子共は私をよく当たる占い師扱いしてよくやってくるが見てやる気もほとんどない。
気まぐれに見たりだとか数少ない友人から「この子ヤバい」というので頼まれたのを見る程度で。
慣れた手つきでカードを置いて、占い結果を示せば青江は笑いながら全然違うよと言い放つ。
「だろうね、私が見るのは縁の方だし」
「ふふ、君が自分への縁が見えたら僕から伸びている縁がはっきり見えてるはずなのにね」
青江の人差し指が伸びてきたかと思うと私の心臓の真上を指先で突く。
セクハラ・・・っちゃセクハラなんだけど、相棒だったにっかり青江と同じ顔なせいでどうにも怒れない。
何だかんだと言いつつ前世では様々な場面で助けてもらったし(家賃と食費代わりと言えばそこまでだが)、今世も何だかんだと仲よくやっている。
「ああ、だろうね。転生してまで一緒ってどんな縁だよ。こっわ、審神者業界こっわ」
そのままべしゃりと机に突っ伏す。
まぁ、余所の審神者さんとか結構この学校に居るしね、こっわ。審神者業の闇が見えるよう。
「・・・・・・怖いくらい集まってるよね」
「ははは、僕達はかつて末席とはいえ祀られて神の名を冠してたんだよ?」
「・・・・・・話す気はないってか」
どうやらこの転生は偶然ではなく仕組まれたものらしい。
青江は何かを知っているようだが話す気はない、か。まあ別にいいや。

「ねえ、アンタが有名な占い師サマなんでしょ?アタシの事見てよ」

耳に付く甲高い声に顔をしかめながら体を起こす。
・・・リボンの色が同じってことは同学年か。髪の毛は人工の茶色で傷みが出てるし化粧べったべただし私が一番苦手なタイプなんだけど。後香水くせえ。
「見てあげたら?雪里さん?」
青江後で殴る。
近くに寄られるだけで吐きそうになるほどにどす黒い感情と縁。何したらこんなんなるんだこのアマ。
「私が見るのは人間関係だけだけどそれでいいなら」
「いいわ」
ふふんと自信満々な笑みを浮かべた女が向かいの席に座る。
タロットを切りながら私は女に伸びた縁を見る。
一つ一つは弱々しいが幾重にも重なっておどろおどろしく怨嗟が伸びている。
いやほんと何したのコイツ。
一人じゃない。何人、何十人からと恨まれてる。小さなものから大きなものまで。
「アンタが何してるかは知らないけど、人に恨まれるような事に思い当たる節があるなら気持ちを改めた方がいいよ。これ以上人に恨まれるような事があれば酷い呪いがやってくる」
塔の正位置か。まあこの女が迎える末路に相応しいカードではあるだろう。すげえ、空気読んでる。
「は?アタシが誰に恨まれるって?そんなわけないじゃない」
この感じ、前世で相手にしてたアホな政府高官のご子息様を見ているようだ。
ああ、そうか。それだそれ。
自分は特別だと思い込んじゃったか。
「まあまあ、それならアドバイスを上げたらいいじゃないか」
青江、後で見てろよテメエ。
「怪我に気を付けて。小さな怪我でも不味い。人の想いは弱ったところに付け込んでくるからね」
カードを片づけながら言えば女は舌打ちしながら「ふざけんじゃないわよ!」と怒鳴り声を上げる。
大方自分に都合がいい結果でも言ってほしかったんだろうがこちとら吐きそうなレベルでの黒い縁なのでご遠慮願いたい。
「彼女、どのくらい保つと思う?」
「さあね。やめてよ、そんな薄気味悪い賭け。・・・まぁ、前世だったら乗ってたけど」
その言葉に青江はくつくつと喉を鳴らして笑う。
「僕、君のそういう所が気に入ったんだよねぇ」
「黙れ伊達眼鏡野郎」

・・・まあ、私もそれなりに気に入っているからいいのかもしれない。

後日前世からの付き合いもあって今世でも仲良くなった同級生から
「みおちゃん、青江と付き合ってるって本当なの!?」
と聞かれたので青江を一発殴っておいた。
意外と青春も楽しいものである。




「・・・で、君の主は記憶を持っている、と」
「そうだね。でも君の主は持っていなかったんだろう?」
「何故だろうな。俺の主は引継ぎだったからだろうか?」
「・・・いや、ブラック本丸を引き継いだ審神者の方が記憶を持っていたのもあったから何とも言えないかな」
「そう言えば―――の主らしい娘を見たぞ。―――が何故かその娘を追いかけまわしていたが本人もよく理由が分かってなかった・・・いや、違うか。理由を知りたいから追いかけていたんだろうな」
「ふふ、―――は記憶を取り戻しかけているのかもしれないね」
「だとしたら一体何が切っ掛けだったのかな?」
「君の話を聞く限り、おそらく転生した俺たちの死因が原因なんだろうな」



「でも、本当に嫌だよねぇ。政府が何を考えていたのかなんて知らないけれど、出られない空間の狭間で主と二人きりで死を迎えるなんてさ」
「まったくだな。最初からアイツらは自分たちの事しか考えていなかったわけだ」